











J商店
老舗味噌屋の店舗建替えプロジェクト。敷地は日光の観光地から外れた、地元の住民が住む長閑なエリアに位置します。敷地前の通りはかつて、多くの店が軒を並べる賑わいのある商店街でしたが、今では多くが閉店し、住宅に建て替わった所も多く、現在も営業を続けている店は数軒残るだけになっていました。そうした過渡期の町に、老舗の味噌屋はどのような姿で建つのが良いのか考えました。味噌屋の経営を引き継いだばかりの若夫婦から、既存の店舗は老朽化のため取り壊し新しくしたいこと。店舗の横に建つ大谷石の蔵と、店舗の後ろに建つ、明治創業から増改築を繰り返してきた味噌蔵はそのまま残したいこと。駐車スペースの確保など、必要となるボリュームが伝えられました。石蔵や味噌蔵はつくられた年代も様式も様々で、そこに新店舗が加わることで生まれる多様な建築物の群れを想像すると、5代続いてきた味噌屋の歴史、継承してきた者たちの意思を、次世代に伝える立体的な年表のようだと感じました。新店舗については、住宅街に移り変わっていく街並みの中では、いかにも店舗然とした店構えよりも、長閑な街並みに馴染みながらも存在感を示すものが良いと考えました。周りを大きく見渡すと、日光の雄大な山や空が広がっています。新店舗はその長尺な風景に重なるように建ち、既存の石蔵や味噌蔵を引き立たせながら、通りに新しい輪郭を浮かび上がらせることを目指しました。新店舗は、外部や内部に必要な場所をつくりながら、既存の建築群をまとめ、敷地に広く展開する壁で構成します。壁が敷地につくるコーナーが、場所によって開いたり閉じたりし、味噌屋の様々な活動や蔵の姿を垣間見せます。陽の光により、空の色に溶け込んで見えたり、また影のように実体のない印象を持つ壁は、通りに面した開口の存在をリアルに引き立てます。開口から覗く、光庭からの自然光に照らされ味噌蔵に向かって伸びる内壁は、外の通りが中へ続くイメージで、通りから人が内部へ引き込まれるようにと考えました。壁がつくり出すこれらの断片的なシーンが、味噌屋の新しい顔として街並みに現れます。